実績
maintenance
維持管理・保全
勝鬨橋詳細点検業務
キーワード
勝鬨橋は1940 年に当時の架橋技術の粋を集めて、隅田川の河口、築地に建設されました。中央径間部は上方に跳ね上がる仕組みとなっており、その開閉機構から「双葉式跳開橋」と呼ばれています。
1970 年を最後にその開閉は停止され、「跳ね橋」の勇壮な光景を観ることはできなくなりましたが、建設から 65年もの間、当地区の変遷を見守り、また、道路交通機能を支え続けてきました。勝鬨橋は今後もその機能、歴史、文化を継承すべく、現在の姿のままで大切に保全していくべき橋梁です。
このようなことから、橋りょう構造の現状を把握し、今後の維持管理のために有用な資料を得ることを目的として、本橋の詳細点検を行うことになりました。
1.詳細点検における着眼点
鋼橋は、薄い鋼板や形鋼を、溶接・リベット・ボルト等で組み立てた構造体であり、耐久性にかかわる鋼橋固有の課題の 1 つとして、構造部材、継手部の繰返し荷重
による疲労問題があげられます。
本橋の中央径間部は、橋脚内部に収納されている設備により、開閉する仕組みとなっています。径間の中央部はヒンジ構造となっているため、比較的揺れやすく振動
を生じ易い特徴を有しています。
そこで、本橋の詳細点検では、「疲労に対する健全性を把握・検証すること」がより重要であると考え、外的・内的の両面から、以下に示す調査を実施しました。
2.業務の紹介
(1)詳細調査(写真-2,写真-3)
建設当初の床版は合成床版でしたが、その後、老朽化などの理由により鋼床版に取り替えられ、現在に至っております。
交通量の非常に多い当路線の使用状況に鑑みて、直接輪荷重を受ける当該部位の健全性を把握するため、目視点検並びに磁粉探傷試験による詳細調査を行いました。
(2)応力調査(写真-4,表-2)
主構造の接合方法は、鋼板と形鋼をリベットで接合した構造であり、疲労に対して高い耐久性を有する接合方法を採用しています。
一方、その後の床版取替えに伴って増設された床組と既設部材の接合については、現場溶接を多用したものとなっており、疲労耐久性において懸念がありました。従って、繰返し荷重等による当該部位の応力状況、耐久性を把握することを目的として、応力頻度測定を実施し、継手構造部位の耐用年数を算定しました。
応力頻度測定は、応力をそのピーク値や、振れ幅の頻度分布として捉えることで、構造物の耐荷力を評価します。
また、既知の荷重と応力の関係を把握するため、ラフタークレーンを試験車両とした載荷試験を実施しました。
(3)振動調査(写真-5,表-3)
振動調査は、橋梁の固有振動数、振動モード、減衰定数を把握することで、損傷要因、箇所の判定などに供するための調査です。
調査は、加速度計を用い、常時の交通振動を起振源として、これらの固有定数を計測しました。