実績

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2021年5月2日

既存宅地の液状化対策設計

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2011年に発生した東北地方太平洋沖地震(以降、東日本大震災)により、東日本地域の埋立地や河川沿いの既存宅地において液状化被害に見舞われました。埼玉県久喜市A地区においても液状化被害が発生したことから、再液状化を防止するため、復興交付金を用いた道路と宅地の一体的な液状化対策事業を進めることとなりました。
本業務では、東日本大震災以前は既存宅地における大規模な液状化対策について、事例も少なく、基準類も整備されていなかったことから、対策工法の選定や効果の検証方法についての提案を行いました。

1.事業計画の策定

市街地液状化対策事業計画策定にあたっては、下記の手順により事業計画の策定を行いました。

2.既存宅地における液状化対策の課題

既存宅地の液状化対策における課題は下記のとおりであり、業務において下記課題を解決しました。

  • A地区の一部に被害が集中している

➡液状化の発生原因の究明が必要

  • 東日本大震災以前の液状化対策工法は、支障物がない中で大型重機(効率性・経済性)を用いて施工をする工法が多い(事前対策が基本)

➡住宅が立ち並んでいる中で施工可能で安価な対策工法の立案が必要

  • 対策による影響と効果の検証手法が確立していない

➡対策の影響と効果の検証方法の提案

3.課題への対応

(1)液状化発生原因の究明

液状化発生原因の究明については、土地利用の変遷・造成方法・地質調査を行い、判断することとしました。
土地利用の変遷については、明治期から現在までの変遷を確認し、明治期は水田として利用されており、水が豊富な地盤であったと推察されましたが、液状化被害分布と照らし合わせると相関は見られませんでした。
次に液状化被害が宅地造成地区に集中していたことから、造成方法の確認を行い、造成時の資料により、囲繞堤と呼ばれる堤防を各地区に築き、その内側へ排砂管を用いて造成していること、液状化が発生した箇所は調整池の浚渫土砂が用いられた範囲と一致していることを確認しました。

また、地質調査により、地下水位はGL-0.7m~1.7mと高く、地下水位以下に粒径が揃っており、液状化しやすい浚渫土砂Bs層が確認され、その下に約25mの軟弱な粘性土層が堆積している状況を把握するとともに、建設残土と浚渫土砂による埋戻区分も、造成時資料との整合していることを確認しました。
これらの、土地利用の変遷・造成方法・地質調査結果等から液状化発生の原因は、下記3点と判断しました。

①強く長い揺れの地震
②造成に使用した浚渫土砂(Bs層)が液状化のおきやすい砂の性状であること
③地下水が高いこと

(2)対策工法の立案

対策工法は、下記理由により「地下水位低下工法」を立案しました。

①A地区は、地下水位を下げやすい地盤であること

  • 砂層の粒径が揃っており、透水性が高い
  • 対象となる砂層厚さが薄く水位低下量も少なくて済む
  • 地下水を排水するための水路が整備されている

②他の工法に比べて、対策費用が安価であること

  • 各街区の道路内の工事だけで宅地内の水位低下も見込めるため、基本的に宅地内の工事が発生しない
  • 地盤を固める工法などに比べて、全体の工事費が安い

③工法のデメリットである地盤沈下の影響が小さいこと

  • 過去の地盤沈下(累計1m以上の広域的地盤沈下)において家屋の構造に影響を与えるような不等(不同)沈下が報告されていない
  • 実証実験、再現解析、予測解析を実施し、必要低下水位まで地下水を低下させても、許容傾斜角として設定した値(3/1000)以下で収まることを確認した

地下水位低下工法の概要については、各地区の外周に周辺からの地下水の流入を抑制するための締切矢板を設置し、区域内道路下に遮水シートと砕石で覆った有孔管を張り巡らせ、既存の排水路に各地区からポンプ排水することで区域内の水位を低下させることとしました。

(3)対策による影響と効果の検証方法

A地区における地下水位低下においては、地盤沈下が発生することとなるため、

  • 水位が適切に下がっているか
  • 沈下の影響は想定内で収まっているか

について計測管理を行うとともに、観測結果を踏まえた予測解析により検証を行うこととしました。

これらの観測結果および観測結果を踏まえた予測解析により、「将来に渡り、地下水位低下の影響は当初の想定の範囲内に収まっていること」・「地下水位低下の効果として、必要な水位低下が図られており、設定した地震に対する顕著な被害の可能性の低い地区となっていること」を確認しました。

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