実績
structure
橋梁
東京港臨海道路臨海大橋(仮称)基本設計
本橋梁は、図-1 に示す橋長 760m(支間長 160m+440m+160m)の鋼 3 径間連続トラス・ボックス複合橋です。上部構造のデザインは、港の景観として特徴的なガントリークレーンをイメージしたもので、長大橋梁の構造としては世界に類がなく、東京港の玄関口に相応しいゲート性とモニュメンタル性を備えた美しいデザインとなっています。また、本橋梁は、中央径間の箱桁部分とトラス部分とを剛結した連続構造となっており、 連続トラス橋としては現存する生月大橋(中央径間長 400m)を上回る世界最大級の橋梁となっています。
なお、本業務では国土交通省より業務表彰及び優秀技術者賞を受賞しました。
1.上部工構造計画
①荷重抵抗係数設計法(LRFD)の採用
上部工設計では、構造物に作用する荷重と部材の強度とを確率論的な手法によって最適化し、橋梁構造全体の安全性の均等化とこれによるコスト縮減が可能となる、限界状態設計法の一種である荷重抵抗係数設計法(LRFD)を用いています。
②橋梁用高性能鋼材(BHS 鋼材)の採用
上部工の使用鋼材は、開発の進む橋梁用高性能鋼材(BHS 鋼材)を採用する計画としています。BHS鋼材は、従来の鋼材に比べ高強度であるとともに溶接施工性を大幅に改善した鋼材であり、製作費用の低減によりコスト縮減が可能となります。採用に当たっては、強度定数等の設計基準の整備を行いました。
③トラス構造と鋼床版構造の一体化
本橋梁では、これまでの長大トラス橋梁で採用されてきたトラス・鋼床版分離構造に替わるトラス鋼床版一体構造を採用しています。
本構造採用のメリットは以下の通りです。
- 鋼床版構造にトラス主構作用を受け持たせることによる鋼重の減少
- 支承構造の省略による初期費用と維持管理費用の減少
- 外面塗装面積の縮小による塗り替え塗装費用の減少
なお、本構造の課題は,鋼床版の疲労損傷発生時における補修作業が難しい点ですが、デッキプレートを増厚した新型の鋼床版構造を採用し、疲労損傷対策に万全を期しています。
2.下部工構造計画
①縞鋼管継手の採用
本橋梁の基礎工には鋼管矢板井筒基礎工が採用されていますが、その継手構造として縞鋼管継手を採用する計画としています。縞鋼管継手は、図-4 に示すように、手鋼管に縞鋼板を使用したもので、縞鋼板の突起によって継手強度が飛躍的に向上するものです。縞鋼管継手採用による効果は,図-5 に示すとおりであり、杭本数を約 35%減少することができました。採用実績のない継手であり、耐荷力実験を実施し、この実験結果をもとに各種設計定数の設定を行っています。
②すべり型免震支承の採用
支承構造としてすべり型免震支承を採用しました。この支承は、テフロン板とステンレス板との摩擦による減衰効果が期待できます。本橋への適用では、図-6 に示すように鉛直反力の変動による摩擦力の変動を適切に解析する必要があります。今回このような解析を可能とする支承バネモデルを計算ソフト企業と協同で開発しました。また、テフロン板とステンレス板との摩擦には、載荷面圧及び載荷速度の依存性があると言われています。
これらの摩擦特性把握のために図-7,8 に示すような載荷実験を実施し、この実験結果をもとに面圧・速度依存性を考慮した支承バネモデル式を設定して、上記の支承バネモデルに組み入れています。
3.投稿論文
- 長大鋼トラス橋におる設計の合理化に関する研究、土木学会第58 回年次学術講演会、2003
- 超軟弱地盤上における長大橋梁基礎工の合理化に関する研究、土木学会第 58 回年次学術講演会、2003
- すべり型免震支承の摩擦特性実験、土木学会関東支部年次学術講演会、2004
- 鋼管矢板の縞鋼管継手のせん断耐力に関する実験、土木学会関東支部年次学術講演会、2004
- 鋼管矢板の縞鋼管継手のせん断耐力に関する実験(第2報)、土木学会第 59 回年次学術講演会、2004